ステルスです
蜘蛛の巣だらけの岩場です。
辺りは真っ暗。ランタンは持ってきていますが、敢えて松明を掲げると、松明はあり得ない強さでまばゆく輝きます。むしろランタンよりも広く辺りを照らします。
これが私の特殊能力の一つ――「輝く正義」です。
とはいえ、この程度では「ほうほう、燃焼コストが悪くてもランタンより明るいのは便利かも」という評価がせいぜいでしょうね。本題はここからですよ。
松明を掲げたまま、恐る恐る蜘蛛たちの群れに近づいてみます。
聞いた話を信じるなら……おお本当だ、見てください!
蜘蛛たちは私の周りをうろうろしますが、いっこうに私を攻撃しようとしません……なんだか私のことに気づいていないようにも見えます。
足下の蜘蛛がぎゃーっと叫び声を上げたので、思わずびくっと槍に手が伸びましたが。蜘蛛たちは何か別の獲物を見つけたようで、あちらに去っていきました。何とも不思議な光景。
ちょっと恐かったけど大丈夫、実験は成功です。
これこそが私のもう一つの特殊能力――「罪深き者は正義から目をそらす」です。モンスターたちは、松明に照らされた私の姿を認識できないのです。あるいは自分の仲間のように見えてるのかも……松明を掲げる2本足の仲間もないと思うのですが。
なんですって、こそこそと何だか悪役みたい?うるさいですね。
確かにこれでは……
正義の味方というより、ヒーローアニメの第一クールで暗躍する敵の小ボスあたりにふさわしい能力だなー、なんて自覚はありますけど。
でも私は腕力がないから、蜘蛛・野犬を1匹殺すのにも手間取りますし、かすり傷でも受けるたびに大きく精神を削られる特殊体質ですから。雑魚に囲まれるだけでいきなり冗談みたいな大ピンチになるのです。
この能力はこの先も命綱になると予感します。