熱烈歓迎!ツリーガード(3)
冒険の書を装備した私は、何としても早く攻撃力を上げるために、ただ今ツリーガードと戦闘中です……戦闘中なのですが。
なんだかしょぼくれた闘いになってきました。
私が非力なら小さなツリーガードも非力。ツリーガードの体力はさすがに4桁に届きますが、こちらだってバックラーでダメージを反射します、ノーダメージです。風呂場の水垢を擦り落とすような味気ない削り合いになりました。
6回槍で叩いて1回バックラーで払うのをひたすら繰り返します。
叩いて叩いて払う。叩いて叩いて払う。とっくに飽きました。眠気を堪える方が大変です。もう途中をすっ飛ばしてエンディングに行っちゃってもいいですかね?私、この状況を面白く実況中継する自信がありません……
長く退屈な時間の後で、
ついにツリーガードの体力が100を切りました。
(……つらい仕事でも終わりが来るって、何かの黒人霊歌にあったなあ。”終わり”ってこの場合、死ぬってこと?縁起でもないや。)なんて半分上の空で機械的に手を動かしていましたら。
うっかり。本当についうっかり。
ツリーガードが腕を振り上げたので、反射的に私はバックラーを振るってしまいました。バゴンッとバックラーはダメージを全反射して、ツリーガードは自分自身の攻撃を食らい……そして体力がほとんど0だったツリーガードは死んで、木片となって砕け散りました。
……待って。
すっかり頭がはっきりしてしまった私は最速で自分の知識を掘り起こします。冒険の書に巨人殺しが記録される条件は何だった?確か「最後の1撃を入れたプレイヤーの手柄となる」でした。それでバックラーが反射したダメージって、私の攻撃なんでしょうか。
大慌てで私は自分の冒険の書を開いてみましたが。
うわぁーん、やっぱり。余白でまっさらな第1ページに綴られているのは、ただ1行だけ。
「昨日の晩ご飯、ミートボール1個。」
待って?待ってよっ。
今のノーカウント!
起き上がってプリーズっ!!
私は泣いてすがりましたが、散らばった丸太相手に意味のないことでした……
仕方ありません。
まだ日は高くて植林もほとんど残ったままです。木を切り続けていればまたツリーガードが現れるかもしれまん。
そう期待して私は伐採作業を再開したのですが。
最初の1発で今日の分の幸運を使い果たしていたのか、全部の木を切り倒しても、ツリーガードは現れませんでした。
丸太はたくさん集まりました。
これなら当分の間、凍死を心配する必要はないでしょう。
よかったよかった、ぐすっ。