ダイナマイト・どんどん!です(3)
古代遺跡の心臓部に潜む影の王、アトリウム・スタルカーを爆殺します。
彼が乗り移って復活する予定の骸骨の像の足下で、ダイナマイトはカウントダウンします。
5…4…今!
私が手に持った影の心臓を骸骨の像に突っ込むと、冷たく固いはずの像は軟体動物のようにびくびくんと大きく痙攣して、2本足で立ち上がりました……大きい!アトリウム・スタルカーが乗り移ったのです。
私は彼から少し…というよりダイナマイトから少し距離を取りました。
爆発に巻き込まれたらあっさり即死できます。
カウントダウンは進んでいます。3…2…
スタルカーはお約束どおり、両手を振り上げて大きく吠えて、そしてこちらに振り向きました。私はお互いの目が合ったことを確信しました。目のない空っぽの眼窩なのに、目が合ったと分かりました。
カウントダウンは進みます2…1…
スタルカーは私を敵と認め、第一歩を踏み出し……あれっ?失敗した?間に合わない!?
そして――――――――――――――――
――――――――――だ、大丈夫。殺しました。
あれはもう音じゃない。
ほとんど物理的に頭を殴られたような衝撃の爆発音と、今まで見たこともないような、とんでもないダメージがスタルカーに入ったことを、かろうじて私は確認しました。
しかし彼は瀕死状態で動いています。
まだ私は被爆のショックで上手く考えることができなかったけれど、とにかく本能で剣を振り回して、彼に最後のとどめを刺したのでした。
――だめです、まだ耳が聞こえません。
自分の声が聞こえないと、上手く考えることもできないんですね。初めて知りました。あ、鼻血だ。大丈夫なの私!?
スタルカーの魂は砕け散り、既に像は只の骨の集まりに戻って、希少なドロップアイテムと一緒に散らばっています。ゴゴゴゴ……と早くも不吉な地揺れが始まりました。もうここに用はありません。アイテムを拾ってさっさと退却です。
――さてと一息、小休止。
既に心臓部からかなり離れましたが、まだかすかに地面の揺れを感じます。
これってあれですかね?
冒険映画でよくある、天井がガラガラ崩れて主人公達が一目散で逃げるという、あれ?いいえ違います。実はこれは危険でも何でもありませんよ……まあ、今まで巻き込まれた人がいないので、本当に安全かどうかは保証できませんが。むしろ事実は逆で……って、あ、待って。今です。今始まって、そしてあっという間に終わりました。
誰しも唐突に理解するでしょう。
ついさっき私はアトリウム・スタルカーを倒したはずなのに、今からアトリウム・スタルカーを倒すのだという、奇妙な二重意識。これは……古代遺跡が元に戻ったのです。
私も「管理人」として、世界を守るために数時間ほど時間を巻き戻すことがありますが。今回のは、それの局所的なやつで、しかも徹底的です。たった今、古代遺跡における私の冒険は、すべてなかったことにされたのでした。
文字通りの元の木阿弥。
遺跡は依然として誰にも採掘されず手つかずのままだし、古代の守護者は墓荒らしの不届き者を一人たりとも通すまいと墓場を徘徊していて、そしてアトリウム・スタルカーの魂は、"いまだ誰も訪れたことのない” 最深部をさまよい続けるのでしょう――未来永劫。
彼もこの世界に囚われた犠牲者であると言えます。
大丈夫、私はあなたのことを覚えていますよ。ご縁があればまた殺し合いましょう。
初めまして、スタルカーさん。