豚の王様に朝貢します(2)
あり余っている怪物肉を豚の王様に献上して金塊を賜ろうという、一石二鳥の計画です。
鳥さんと協力してたくさんの怪物肉をたくさんの卵に変えていたら、日が暮れてしまいました。しかしこれから直ぐに出発します。
豚の王様が住まう豚の村(王なのに治めているのは村!)は、この世界ではキャンプ場から見て、大陸の真反対側になります。
午前中の謁見に間に合うように、夜中も移動して朝に到着する予定です。
大陸を縦断する長い長い道を急ぎます。
なんと今夜は満月でした。
薄暗い松明やランタンを装備しなくても安全に歩けるというのは、やはりほっとします。
このへんは墓地ですね……あ、幽霊さんだ。
満月に浮かれて墓から出てきたのですね。ふわふわと追いかけてきますが、今夜は戦闘はパスです。急いでるんで。
そして日の出の少し後に、豚の村に入りました。
開けた草原に豚小屋がぽつぽつと散らばって建っていて、たくさんの豚さんたちが徘徊しています。
私と豚さんとの関係は概ね友好的です。(キャンプ場にも数匹の豚さんが住んでいますしね。)ときには野菜をあげてウンチをもらったり、ときには食うか食われるかの生存バトルをしたりしますけど。今日の用事は豚の王様なのでスルーです。
豚の王様は村の中央の、板張りの上に鷹揚に横たわっています……湿った土の上に固い板を張っただけ。屋根はありません、雨ざらしです。
(ふ、所詮は畜生の王……)って、おおっと本音が。
今から謁見するのに、顔に出てたらやばいやばい。
「このたびはご機嫌麗しゅう、もごもご」
などと形だけの挨拶もそこそこに直ぐに本題。一つずつ卵を献上します。
「どうぞ」「うむ」(ポイ)
返して豚の王様は金塊を下賜します。
「どうぞ」「うむ」(ポイ)
「どうぞ」「うむ」(ポイ)
「……」「……」
「どぞどぞどぞどぞ……」(ポイポイポイポイ……)
……まあね、王様の本音は早く卵が食べたい。私は早く金塊が欲しい。そんな厳かにちんたらやってられませんよ。
みるみるうちに床は金塊でいっぱいになりました。
なかなか至福の眺めです。
全部拾って退散します。
また長い道のりを帰ります。キャンプ場に着くのは夜になりそうです。