野犬に追いかけられました
岩場で石を採掘していたらウォンウォンと吠える声が聞こえました。
野犬の群れです。まだ声は小さくて遠くにいるようですが、ここはキャンプ場から離れています。逃げ帰るまでの時間はないと即断しました。
私は自分の状態を点検します。
体力は十分、装備したログ・アーマーも新品。これなら2,3発ダメージをくらっても、4匹程度の野犬なら不安なく殺せるでしょう。ここで迎え撃つと、私は覚悟を決めました。
闘いが始まるのは夜になりそうです。
私はランタンを地面に置いて照明を確保して、襲撃に備えます。
次第に大きくなる野犬の声……そして夜になりました。
すうっと闇で視界が狭くなるのと同時に、ざざざざと周囲に四つ足の駆ける音。来た!私は斧を構えました。そして次々にランタンの光の中に飛び込んでくる野犬たち――えっ!?ちょ、まっ、多すぎ!
8匹?9匹?数える余裕なんてありません。
最初に飛び込んできた一群は、既に背をたわませて攻撃モーションに入っています。祈る気持ちで私はバッグラーを振るいましたが、野犬たちはばらばらに噛みついてくるので、タイミングを合わせることができません。
「がぶがぶがぶがぶ」
「きゃーっ」
ダメージ反射は失敗して、ごっそりと私は体力を失いました。
見れば既にボロボロのアーマー、そしてこの野犬の数――あ、詰んだ?
私は死を意識しました。反撃を試みたところで、一斉に噛みつかれて、一撃を入れることもなく殺されてしまうでしょう。
休む間も与えまいとばかりに責め立ててくる野犬たち。
このままではジリ貧です。ヤバイ、絶対にまずい。逃げなきゃいけないなんて当然分かっています。でも野犬たちがしつこくてランタンを拾う隙がないのです。暗闇の中の狭い光の円の中に、私はたくさんの野犬たちと一緒に閉じ込められた格好です。
逃げ場のない中で、私は野犬たちとの鬼ごっこを強いられました。
ランタンを中心にぐるぐるぐるぐる……ときどき「がぶっ」と食いつかれるのが地味に痛い。くっそぉぉバターになっちゃえ!
ついに夜が明けました。
私はランタンも採掘した石も全て捨てて逃げ出しました。
そして追いかけてくる野犬たち。
どこまでもどこまでも、どこまでも追いかけてきます。(ここまで逃げたら大丈夫だろう、もう許してくれるだろう……)そんな気配がぜんぜん感じられないのです。
私は半べそをかきながら走り続けたのでした……
それで、どうやって助かったかって?
結局、野犬たちを連れたまま大陸のほとんど反対側のサバンナまで走って、育児でピリピリしていたビーファローたちになすりつけてきましたよ。
やっと人心地ついて、そういえばと改めて体力を確認すると、わずか4しか残っていませんでした。とんでもない、下手すりゃ死んでたんだ私。
で次は?更に野犬の数が増えるのでしょう?
絶対に無理、死にます。これは本気で対策を考えなければなりません。